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ブロックチェーンの有用性

ブロックチェーンの有用性

2018年08月07日

 

今、世の中にあるモノ・コトの中で、「データ化できる」「ファイリングするべきである」「書き換えなしの永久保存が必要だ」といったものは、全てブロックチェーンの導入が可能である、といえます。また、何か事業を始める際や、公益のためのアクションを起こす時の資金調達手段としても、ブロックチェーン技術を活かすことができます。事実、既に世界中でブロックチェーンは運用されており、着実に成果を出しています。実装に向けて検証中のブロックチェーンも、数えきれないほど存在します。

もちろん、閉鎖的小規模で行われているものなどは、従来の方法で行った方が効率が良いとか、むしろアナログの方が良い結果を望めるといった場合もあります。しかし同時に、ブロックチェーンを導入したことで大きな損失を生むようなことも、おそらくないでしょう。ブロックチェーンは従来のシステムと比較して、導入から運用までのコストが大幅に低減されているからです。

 

そういった導入のしやすさも含めて、ブロックチェーンが活用できる場面はあまりにも多く、その全てを紹介するのは不可能です。ここでは、ブロックチェーンが活用できるであろうと注目されている業界の、代表的な例をいくつか、4つのカテゴリーに分けてピックアップしてみましょう。

 

 

■ビジネス

<金融>

ビジネスの世界で、最も大きな影響を受けると考えられているのが「金融」です。ブロックチェーンは分散化された台帳であり、決済のスピードを早め、仲介を省略し、ヒト・モノ・コトをダイレクトに繋ぐ力を持っています。これらは現在、金融システムが担っていることと、ほぼ重複します。むしろ、金融システムの中で、今まで隠され続けていた「歪み」の部分を、ブロックチェーンが全て白日のもとに晒してしまったともいえます。

複雑化した金融システムの中で、取引をするたびに我々は本来の価値より余計な支払いをしたり、本来手に入るタイミングよりも長く待たされたりしています。これに対し、原始的な経済である「2者間の交換」という行為は非常に合理的です。その場で、余計な手間をかけず、無駄もなく、確実に希望するモノが手に入ります。現在の金融においてそれを実現するのがブロックチェーンです。経済の発展の中で加わってしまったプロセス、いわば贅肉を、ブロックチェーンはそぎ落とす力をもっているのです。

ブロックチェーンによって、決済が当事者間で直接行われるようになり、価値の交換が瞬時に完了すれば、手数料も、第三者を介する無駄な時間も、取引における信頼も全て不要です。現在の金融システムが今後消滅することはないかもしれませんが、ブロックチェーンの力の前で、そのあり方を変えていくことは必要になります。

 

金融の現場はどう捉えているのでしょうか。ある銀行のIT部門担当者に「ブロックチェーンは脅威か?」と聞いたところ、こんな答えが返ってきました。

「まだ分からない。ブロックチェーンは“道具”だから、誰が使うかによって性格を変える。だから私達も使えるようになっておく必要がある」

おそらくこれは率直な意見だと思います。そして今、国内の大手銀行はブロックチェーンを利用した新しいシステム開発にしのぎを削り、その間にも世界中のブロックチェーンが、金融システムを超える何かを作ろうと動き続けています。どちらにしても、既存のシステムを破壊し、再生しながら拡大するブロックチェーンを止めることは、誰にもできません。

 

<企業の財務>

また、金融だけでなく、企業の帳簿も全てブロックチェーンでの管理が可能になります。帳簿をオープンにしてブロックチェーンで管理すれば、財務諸表のミスがなくなり、会計士や税理士の手を煩わせることもありません。経理上の人件費も大幅にカットできるでしょう。しかし、これには反発する企業の方が多いのではないかと思われます。経理部門の仕事をガラス張りにするのは、企業にとって不都合が多いからです。

しかし、何も隠す必要がない企業であれば、正確性と効率を考えるとブロックチェーンでの帳簿管理にNGを出す理由がありません。これから先、ブロックチェーンで財務をオープンにする企業が登場し、続々と増えていったら、ブロックチェーンを導入していない企業は「旧態依然の管理を続けているのには何か理由があるのか」という目で見られ、融資などを受ける際に支障が起きる可能性も出てくるでしょう。それが本来の、企業に求められる透明性だとも言えます。

ブロックチェーンに対して懐疑的な企業が持っているイメージを擬人化すると、おそらく「恐ろしく仕事が早く正確だが、潔癖症で融通が利かず、トップの指示に従わない、扱いづらいスタッフ」といったものだと思われます。このイメージは完全に的外れではありません。表現を変えると「仕事が早く正確で、ミスや不正を見逃さず、犯罪をブロックし、常にブレないスタッフ」となります。このような有能なスタッフを排除する企業があるとすれば、どういった経営を行っているかは想像に難くないでしょう。

 

 

(※前号の続き)

<シェアリングエコノミー>

インターネットを駆使した「配車サービス」が話題になり、会社も急成長を遂げました。創業から10年経たないうちに世界中にネットワークを広げ、いまや大企業の仲間入りをしています。このサービスはエンドユーザーとドライバーを結ぶものであり、移動手段としての車を「シェア」するという意味でシェアリングエコノミーというカテゴリーに含められています。

シェアリングエコノミーをビジネスモデル化し、短期間で展開したという点は企業として称賛に値するものでしょう。何よりも、売上高にその結果が顕著に表れています。しかし、「シェアリングエコノミー」はこれで完成されたのでしょうか?

答えはNOです。インターネット配車サービスは、エンドユーザーとドライバーを結びますが、その間に企業が入っており、システムはその企業のコントロール下におかれ、ユーザーとドライバーの双方から利益を吸収しています。従来のタクシー会社と比べると基本の形態は大差なく、むしろ「大量のアマチュアドライバーを抱えた巨大タクシー会社、のような組織」という表現の方が的確です。しかし、ブロックチェーンによる配車サービスを完成させれば、本当の意味で革命的なシェア事業が成り立ちます。

ドライバーもユーザーもブロックチェーンに登録し、ユーザーはドライバーのプロフィールやこれまでの仕事ぶりをチェック、ドライバー側はユーザーのリクエストと支払の確実さを確認します。契約はブロックチェーン上で成立し、移動というサービスを受け、目的地にたどり着いたら暗号通貨で支払いをして終了です。ユーザーは現在の配車サービスよりさらに安い運賃で移動でき、ドライバーは高いギャランティを得ます。第三者が搾取する余地はありません。実際はもっとシステマティックに、他のテクノロジーも巻き込んで成立させなければなりませんが、基本的な考え方としてはこのような方法で配車サービスが成り立ち、フリーのドライバーが自立できる環境が完成します。

 

他にもビジネスの場でブロックチェーンが革命を起こすと考えられる場は多くあります。特に「資金調達」については既に大きな動きが起きており、それに付随する問題も発生していますが、詳しくは後の章で述べることにします。

以上、ビジネスにブロックチェーンがもたらす動きを、主な例をもとにピックアップしてみました。ブロックチェーンの技術はビットコインから生まれたものであるため、ここで述べたように金融やビジネスでの研究・導入が積極的に進められていますが、ブロックチェーン技術そのものは単体でも機能を失わず、かつ有用性の高いものであるため、他のあらゆるシーンでも有効に活用できます。

 

 

■行政

<登記>

例えば土地の登記があります。日本国内では、山林など一部の土地で境界問題が発生する程度で、土地管理は比較的厳正に行われておりトラブルが頻発するようなこともありませんが、諸外国では深刻な問題の一つです。政府の機能が充分でない国や、紛争地域などでは、自分の土地がいつの間にか横取りされているという事例も珍しくありません。ブロックチェーンで土地の登記を行えるようになれば、誰もが「ここは私の土地である」と主張できる権利を獲得できます。ブロックチェーンの運用が続く限り、国家権力であってもそれを書き換えることはできません。

 

<年金>

世の中の記憶から薄れてしまった感はありますが、2008年、社会保険庁による年金改ざん問題が起きたことがありました。これは企業と行政機関による、ずさん極まりない年金管理の内容が露呈した事件でした。この事件で我々が学んだ通り、国も企業も間違いを起こしますし、人間がデータを処理する場面には必ず不正のリスクが伴います。我々が知らないところで企業と行政機関が結託し、国民に不利益をもたらすこともあるのです。

年金が、もしブロックチェーンで管理されるようになれば、改ざんは一切不可能となり、このような不正問題は起きません。また、国レベルでの出納も明らかになるため、現在プールされている年金の正確な金額と、納入率の推移、人口統計などから将来の支給額を推計することが可能になり、個人レベルで年金制度の将来を判定できるようになるかもしれません。現在、国のウェブサイトで公開されている年金支給額の試算ページなどよりも、よほど正確なものになるでしょう。そして、政治家の年金未納問題もなくなるはずです。

 

<マイナンバー>

国内で行われている「マイナンバー制度」。この制度が存在することの是非はともかく、現在のマイナンバー制度を構成するシステムは、非常にお粗末なものであるという指摘を再三受けています。鳴物入りで登場したものの、周知が行き届いていない、未提出でも事務処理が進められる、省庁間でのデータ共有がうまくいっていない、など綻びだらけのシステムで、何のために予算を組んで導入したのか、首をかしげたくなります。

ブロックチェーンで管理すればこういう穴だらけのシステムは無くなります。個人情報はブラックボックス化した上で、必要な相手に、必要なデータだけを提出すれば、税、福祉、医療、教育など様々な場面で、もっと意義のある活用をすることができたでしょう。我々の生活において有意義で、メリットを享受できる制度であれば、誰もが積極的に登録し、個人レベルで活用ができたはずです。もちろん、運用の主体(国)がブロックチェーンのことをうまく理解していないまま導入すれば、今よりも状況がカオス化するだけです。

 

■文化

<著作権>

インターネットの登場により、我々の生活は格段に便利になりましたが、それは同時に著作権破壊の時代の到来でもありました。

音楽も小説も学術論文も、リリースと同時に拡散され、コピーが大量に出回り、我々末端のユーザーにとってはどれがマスターなのか全く分からない状況になってしまっています。損をするのは、アーティストや製作者、著者たちです。作り手が利益を得るシステムが崩壊すれば、文化も崩壊してしまいます。それを守るために、ブロックチェーンの導入が世界中で研究されています。

たとえば、ブロックチェーンに著作物の全部、もしくは一部をデータ化して保存し、タイムスタンプを押して権利の発生時期を確定し、暗号化して改ざん不能にする。コピーがあればマスターデータと比較して著作権違反だという指摘が可能になる、といったものが挙げられます。活用の仕方によって、作り手とエンドユーザーの直接取引が可能になったり、今までは遠い存在だったアーティストへの直接オーダーができるようになったりするかもしれません。

現実に、音楽のシーンではこのブロックチェーンで自分たちの権利を明確にしていくムーブメントが広がり始めています。作り手だけでなく、受け取る側も著作権を守ることに積極的に協力できるようになるのです。

 

 

<公益活動>

また、ローカルな文化財の保護や、地方再生など、公益のための活動を始めようとしても、拠出金を集める段階で長い時間がかかり、人々が疲弊し、その間にも守るべき対象は少しずつ風化していく、というような事例が多々あります。こういった問題はクラウドファウンディングの登場でかなりスピードを速めることができましたが、残された問題をブロックチェーンが一気に解決できるかもしれません。これについてはICOの章で詳しく説明します。

 

 

■市民生活

前述の全てが、市民生活にも何らかのかたちで関わってくるものですが、中には実感の湧かないものもあるでしょう。生活の中で、変化を感じ取れる身近なものとしては、たとえば以下のような例があります。

 

<ネットフリマ>

スマホの流通に伴って、ネットフリマが急激に成長しました。子育て中の母親が、家事の合間に、指先ひとつで洗い替えのベビー服を1着購入するというような風景が当たり前になってきています。魅力は安さと手軽さですが、ブロックチェーンの導入で、この流れをさらに簡略化し、手数料を省くことができます。仲介会社を通さない直接売買ですが、出品者や購入者の評価もブロックチェーンに刻まれていくので、マナーの良くないユーザーは自然に排除されていきます。決済は暗号通貨で即座に行われるので取引時間のロスもありません。条件が合えば物々交換も成り立つでしょう。文字通りのフェアトレードです。このシステムが完成すれば、ネットフリマの会社は解体するか、他の業種に鞍替えすることになると思われます。

 

<商品管理>

スーパーで食品を買うと、生産国や生産地の表示がされています。また、加工食品にも成分やカロリーが記載されたラベルが貼られています。便利ですが、それは本当に信じて良い情報でしょうか。食品業界での偽装事件は過去に何度も発生しています。生産地に消費期限に添加物と、手を変え品を変え、企業は嘘の情報をラベルに刻印し続けてきました。レストランのメニューに「国産牛のハンバーグ」と書かれていても、実は外国産の牛肉に豚肉と化学調味料を混ぜたものかもしれません。そこに添えられたクレソンが農薬をたっぷり使う農場で育ったものだとしても、我々にはそれを調べる術がありません。

食品管理にもブロックチェーンを導入すれば、誰がどこで作り、工場でどのように処理され、何が加えられたか、そして誰がいつどのように運んで自分の元にたどりついたかという情報が、誰の目にも明らかになります。ブロックチェーンによる無言の冷徹な監視が抑止力となり、偽装をしなければ成り立たないような会社は淘汰されていくでしょう。

 

 

以上、ブロックチェーンが活用できる場面を、いくつかの例を交えて紹介しました。これらはむしろ、「活用すべき場面」と言い換えた方が良いのかもしれません。ブロックチェーンの導入で何らかのデメリットが発生することが考えられるでしょうか? 導入コストが抑えられ、不正をなくし、悪意を排除し、恒久的に運営可能である、これらのメリットを打ち消すようなネガティブ要素は無いと思われます。

ただし、ブロックチェーンとそれにまつわる事象が100%安全という訳ではありません。人の手が介在するところには必ず何らかのトラブルが発生します。次項では、ブロックチェーンに危険性はあるのかという点と、その回避策について考察していきたいと思います。